グーグル、フェイスブック…芸術家を社員登用するIT業界トップ企業の目算
5/12(土) 16:56配信:夕刊フジ/Yahooニュース
グーグルやフェイスブックなどIT業界のトップ企業は、芸術家を社員に採用し始めている。IT業界はAI(人工知能)開発競争の真っただ中だが、AIが一般に普及する10年後にはIT業界の自然淘汰(とうた)が始まる。AIをパートナーにすれば少人数の会社でも十分にITビジネスができることが見えているからだ。そのとき、AIと最も共存できる存在が芸術家だというのが多くの関係者の予測だ。 データやマニュアル、そしてルールの世界だけなら、人間はAIには勝てない。だが、答えのない「感性」を表現する世界なら、人間の天下である。 感性が繰り出す「こんな世界があったら…」や「こんな気持ち」などを表現できるのが芸術だ。 芸術家はまず、自分の感性をイメージする。次にその感性を「他人にもわかるように表現する」段階に入る。その表現する方法をAIと共同で試行錯誤しながら形作っていくのが、新しい時代の開発手法だ。 つまり、人間の妄想したことをAIが文字や絵、音楽、商品、サービスにする手助けをするということだ。
クリエーティブで芸術的な能力を持つ人が、AIをパートナーに新しいビジネスを創り出す時代が近づいている。 私は3月に米テキサス州オースティンで開催された「SXSW」(サウス・バイ・サウスウエスト)に行った。SXSWは街ぐるみで音楽や映画、サブカルチャーやデジタルなどの展示を行う大イベントだ。従来型の講演や物販イベントとは根底から異なる、先端技術と芸術作品を企業や個人が発表する祭典である。Uber(ウーバー)をはじめとする新時代のビジネスは、ここを登竜門に続々と生まれている。 私は高校生を含む4人の学生を連れて行き、ITコンペに参加させたところ、10代の感性を音楽で表現したということで日本人初の受賞を獲得した。未来を感じさせるアイデアを3日間で考えて実演させるコンペだが、パソコンやスマホで作り込んだ完成度の高い実演は評価されず、次世代を感じる従来にないアイデアのみが評価対象。特にAIを使った実演が上位を占めた。すでに、ここでは芸術的感性とAIがコラボしていたのだ。 こうした萌芽は至る所に見られる。最近、カナダのバンクーバーに引っ越した知人のグーグル関係者は「ここは多民族主義で差別もない。銃禁止の文化国で、芸術的な思考が可能なAI研究をしたい」と話している。 実際、バンクーバーのブリティッシュコロンビア大学をぶらつくと、芸術とAIの融合を課題としたラボが目についた。世界中から集まった天才学生たちは「芸術する人間と、それを形にするAIのコラボレーション」のブレストを行っていた。読者の皆さんが10年後もまだ現役でいたいなら、今から日曜画家や日曜小説家、日曜作曲家となることをお勧めする。(プランナー・久保田達也)