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アカンサス暗号
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「アカンサス」とは地中海沿岸を原産とする「葉薊/あざみ」で、古代ギリシャ以来の代表的な建築・装飾の文様、なんて聞いて納得するのは単なる地球人。「渦巻き文様」から遥か宇宙の彼方に渦巻いている銀河系かに座-55CancriこそマダムKの「出身星」です。サロン入り口には「植物」に化けたアカンサスが群生していますが、これこそマダムKの「実家」との交信装置に違いありません。




 
 
 
 
アカンサス・エクスプレスの謎
キーワードは「アカンサス」「コンサバトリー」「オリエント・エクスプレス」・・・これを手がかりにうっとり探偵団が妖しの魔界に踏み込みます。出発駅はここ「アカンサス・エキスプレス」。妖怪共が跳梁跋扈する日没になると時刻表が浮かび上がります。「列車は重力波の影響で遅れることがあります」・・・既にこの世のものではありません。


コンサバトリーの謎
一般向けの説明では「英国で誕生したガラスの温室、日本ではハイカラなサンルームを指します」って甘いな明智君!その親玉でもあるベルギーの「ラーケン王宮温室」を見れば本質が判ります。 1873年、レオポルド2世によって作られたアール・ヌーヴォー建築の「ガラスの宮殿」。当時としては最も斬新な建築資材の鉄とガラスをふんだんに使った広大な空間は温室などという生易しいものではなく、どう見ても巨大な受信装置。そこに身を置くことで、見えなかったもの、聞こえなかったものを感じる異空間なのです。


かに座-55Cancriの謎
知覚・感覚が研ぎ澄まされる「非日常空間」なら愚かな地球人との「コンタクト」も可能になる。その証拠に「サロン・アカンサス」は西方に風景が開けて、その延長上にガラスの王宮が位置し、更にその遥か41光年の彼方には「かに座-55Cancri」が妖しい光を放っています。



オリエンタル・エクスプレスの謎
最後のキーワードはかのアガサ・クリスティーも大好きな「オリエンタル・エクスプレス」。今でこそ単なるノスタルジックな「観光急行」ですが、当時は世界一豪華な移動空間。そう、これも「非日常空間」なのです。特に「オリエント」とは「オリエンテーション」と言う言葉が示す通り「示す、導く方向」・・・確か「東方三賢人」もそんな存在でした。ここでもマダムKの思惑が働きます。こんな列車に乗る人間は「選ばれし者」である可能性が高い。愚かな地球人が自らの地球を破滅させる前に「彼等」を脱出させる乗り物としてこれを利用する。その名も「アカンサス・エキスプレス」!老朽化した「銀河鉄道」の替りです。あれっ!宮沢賢治の銀河鉄道は1934年、オリエント・エクスプレスのは1883年・・・まあ、マダムKの星では時間の進み方が違うので細かい話は無視しましょう。これでようやくキーワードが繋がったのだから・・・
 


 銀河鉄道の夜

「銀河鉄道みたいですね?」

「オリエント急行とガラスの城と銀河を舞台にした世界を想像すると確かに銀河鉄道の夜と重ねる部分はありますが、宮沢賢治はあくまで人間童話。アカンサス急行は人類の謎に向かう空想列車です」

「神話でも空駆ける乗り物が登場しますよね?」

「日本のかぐや姫も含めて世界中の神話や民話に空を駆ける馬車やら機械が登場するところをみると、古代人は実際に”何か”を見たんじゃないですか」

「見たって何を見たんです?」

「何らかの天体現象だと思います。古代人にとって流れ星やオーロラや皆既日食ですら驚天動地の出来事だった筈です。でもそれだけでしょうかね? 」

「他に何を見たんです?円盤とか?」

「一番短絡的。もし宇宙船だったら何故その後地球に来ないのか・・・」

「その後滅んでしまったとか・・・」

「アカデミアらしく発想を変えた見たらどうでしょう。つまり来たのは宇宙人ではなく ”我々” だった・・・だから2度と来る必要はない」

「き、来たってどこから?」

「そんな昔のことは判りません。と言うより理想の星に着たんだから戻る必要がない。でも故郷を懐かしむ ”物質” もいるかも知れません。そんな ”物質” のためのアカンサス急行です」

「どこに行くんですか?」

「脳内宇宙です。遠い将来、我々が宇宙だと思い込んでいた世界は実は脳細胞の挙動に過ぎなかったなんてことになるかも知れません。宇宙の時空に関して我々はとんでもない勘違いをしているのかも・・・」

「宇宙は存在しないとでも?」

「結局”存在”の定義です。死んだら記憶も消える。ならば記憶はモノではなく生命現象。だからカタチとして残すか、外部記録装置に保存したモノを存在と決める」

「何だか宇宙旅行したような気に」