東京湾の入り口に匕首のように突き出た三浦半島は江戸の昔から首都防衛の最前線。今も湾内に残る第一・第二海堡もその遺構(第三海堡は関東大震災で崩壊)・・・その後、大砲の射程距離が伸びて海上要塞としては無用化したものの、陸上の三浦半島は太平洋戦争時には半島全体が要塞化。もし広島・長崎への原爆投下が半年遅れていたら、アメリカ軍は茅ヶ崎に上陸して神奈川県は第二の沖縄になっていた。そんな悪夢の痕跡は今も「廃墟」のフリをして、畑の中や崖下に、あるものは剥き出しに、あるものは草に覆われ、あるものは今も得体の知れない怪電波を発しています。で画像拡大


三浦半島が「影」に事欠かないのには理由があります。台地が多いということは、そこにある建物や物体は下から見上げる位置にあるので日没で浮かび上がる「影効果」はひと際目立つ訳です。だけでなく、畑の中に旧日本軍の遺構があって、昼間は目立たなくても日没時には異様な形を浮かび上がらせて探偵団を興奮させます。
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「悪夢?何か恐ろしいイメージですね」

「素人が見たら薄汚れた古い構造物でも感性に優れた人が見れば”風景の黙示録”と映ります。特に戦争の遺構は人間の情念が最も凝縮したモノの一つです」

「それが今でも”現場”に残されている?」

「だからこそ価値があるんです。地主にしてみれば邪魔・迷惑でしょうが、あくまで負の記憶遺産。負というのは戦争に負けたからで勝っていれば戦勝遺産・・・単なる結果で正と負が分かれる愚かさに気づかせる遺構として保存すべきです」

「それが三浦半島に沢山残っている?」

「地政学的・戦略的に重要な位置を占めていますからね。東京湾に匕首のように突き出ている半島は”敵”から見ると邪魔でしょうがない。守る側からみれがここで敵を防げば東京湾の奥にある帝都は守れる」

「でも爆撃でやられましたよね?」

「初めから上陸作戦で本土を占領できれば、もっと手間が省けた。原爆投下~ポツダム宣言受諾で中止になりましたが、もし茅ヶ崎海岸へ上陸する”コロネット作戦”が実行されいたらサリンを撒かれて、それこそ”悪夢”が現実になっていた」

「遺構はそんな悪夢を彷彿とさせる・・・」

「現場に悪夢を感じさせる”物質”が残留している訳ではなく”知識”としてそれを知ることで脳内に悪夢という物語が作られる。それが風景と結合して透明で濃密な情感を引き起こします」

「”営みの痕跡”なんて情感ですね」

「いい表現ですね。松尾芭蕉の ”夏草や つわものどもが 夢の跡” も植物の観察ではなく、戦国の夢を追った人間の情念の儚さが見事に風景化されていますね」

「自然の風景も美しいですが、かって人間の営みがあった風景に濃密感を感じるのは不思議ですね」

「ある意味”透明感”と”熟成感”の違いかも知れませんね。新鮮なグレープ・ジュースとふくよかなワインとの違いのような。静寂な廃墟や遺構はこの両方の空気が流れています。三浦半島にはそんな場所が沢山あります。写真はその一部に過ぎません」