titile


「夕日を眺めてうっとりなんて探偵団も人の子、誰が見てもキレイな風景はいい、ということですね」なんて言われると「じゃあ伺いますが一日中同じ風景なら美しいと感じますか?」「?」「ピンとこなければ花火。消えることなく夜通し光っていたら美しいどころかいい迷惑ですよ」「確かに・・・」ここでようやく相手は「美しさの本質は儚さ」だと気付きます。三浦半島が「夕日の宝庫」である理由は東・南・西の空と海が一望できる台地であることです。しかも主要道路を一歩入れば、そこは誰もいない特等席・・・日常生活圏でありながら、少し走るだけで透明で濃密な非日常世界が待ち受けています。で画像拡大

 


三浦半島が「影」に事欠かないのには理由があります。台地が多いということは、そこにある建物や物体は下から見上げる位置にあるので日没で浮かび上がる「影効果」はひと際目立つ訳です。だけでなく、畑の中に旧日本軍の遺構があって、昼間は目立たなくても日没時には異様な形を浮かび上がらせて探偵団を興奮させます。 →  画報トップへ戻る 

tou_top 風景アカデミア「黄昏」

「黄昏?何か落ち目のイメージですね」

「そこが素人。終焉どころか地球が映し出す最も妖艶な瞬間が日没。しかも46億年間同じ風景は一度としてない」

「山の中での日没とは大違いですね?」

「山は暗くなったら危ない場所。暗くなる前の海は安らぎの場所。やはり海の力は偉大です。世界中で日没の海を見ている人は毎日もの凄い数だと思いますよ」

「朝日が昇る海が好きな人もいますね?」

「真面目で健康的な人でしょうね。ケチをつける気は毛頭ありませんが、美意識という面では少し違う。朝日は希望の象徴。夕日は終焉の象徴・・・暗くなる前の美しさには儚さと名残惜しさがある。美の本質だと思いますよ」

「不健康なものが ”美” なんですか?」

「耽溺とか熟成と言って下さいよ。映画でいえばビスコンティとかタルコフスキーの世界。6時に起きて8時に寝る人には理解できない世界でしょうね」

「健康が悪いような言いかたですね」

「良い悪いと美意識とは別です。漂白の詩人・石川啄木の ”かなしきは 小樽の町よ 歌ふこと なき人々の 声の荒さよ” ・・・善意の解釈もありますが、やはり”健康”が持つ問答無用の圧力が美しいものを壊す感覚がありますね 」

「そういえば観光地でマナー無視、大騒ぎする連中もいますね」

「極端な言い方をすれば犯罪や戦争を引き起こすのはそうゆう輩です。美しさを感じる心は大切ですよ」

「風景の話から人間の話になってしまいましたが、美意識なんて生まれつきのものじゃないんですか?」

「遺伝子もありますが育った環境も大きな影響を与えます。美しいもの・凄いものに接することのない小供は寂しいですよ。たまにはこんな写真の風景に佇んでみると眠っていた美意識が甦るかも知れません」